「って加地きーてんのかよ?」
「あぁ…聞いてるよ〜
えっと、数学のテストのことだっけ?」
「全然、違う!今度の合コンのことだよ」
最近の僕はずっとこんな調子
まさに“心ここにあらず”って感じだね
理由はわかってるんだけど
春に、カノジョとデートしてた臨海公園
男子校に通ってたけど、カノジョが途切れたことなんてなくて
あの時も告白されて、何となく付き合ってた
女の子の好きそうなこととか、ものとか…
元からの何かを理解しようっていう好奇心も役立って、簡単だった
その日も臨海公園で夕陽を見て、通りで買い物をしてご飯を食べて帰る
そんな当たり障りのないプランを立ててた
「葵くん?どうしたの?」
急に足を止めた僕の行動を不思議に思ったカノジョが聞く
「あ…ううん、何でもないんだ。ごめんね」
って言ったけど、やっぱり気になって
「ちょっと寄り道して良いかな?」
臨海公園の広場まで足を延ばす
あの音色が聞こえる所へと
そこには一人の女の子がヴァイオリンを弾いていた
僕が手放したヴァイオリンを…
苦い思い出のはずなのに
楽しそうに…愛おしそうにヴァイオリンを弾く彼女に僕は釘づけだった
ずっと動かない僕にカノジョが怒って帰って行ったけど
そんなことどうでもいいんだ
僕の心を占めるのは全て彼女だけ
音楽のミューズに愛された彼女のことだけだった
春以来、ずっとカノジョを作らない僕に
らしくないって、こうして友達が合コンをセッティングしてくれるんだけど
誰にも心動かされない
名前も知らない君だけど
どうやら僕は君に夢中になってしまったみたい
その清らかな音色もそうだけど
音色を奏でる君自身に…
僕は人生初めての一目惚れしてしまった
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<あとがき>
2ゲット前に書いた「僕の女神」と似ている御題ですが、
2プレイ後に改めて書きたいな〜と思い、出会いを創作してみました☆
きっと加地くんは彼女なんて掃いて捨てるほどいただろうという
魚月の妄想&理想を込めまして♪
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