とっておきのバースデー











「ねぇ、香穂さん僕に“おめでとう”って言ってくれないかな?」

香穂さんは少し首を傾げながらも

「………おめでとう?」


僕にとびっきりの言葉を言ってくれた

「今日は僕の誕生日なんだ。だから君にそんな風に言ってもらえるなんて…
 僕はそれだけで幸せだよ…?」


昼休みはお気に入りの屋上で“ハムレット”を読む


“生きるべきか死ぬべきか”


こんな主人公の気持ちを僕もわからないでもない

苦しくて絶望から逃げたくて…

押し付けられそうな思いをいつも背負っていた



少し感慨に耽って…空を見つめると屋上のドアが開いた


「香穂さん……?」


「やっぱりお誕生日には何かをプレゼントしたいから…
 私が今用意できるのは音楽しかないけど…
 加地くんのために精いっぱい弾くよ…?
 何が良い?」

僕に笑顔を向けてくれる彼女の顔をしばらく見つめてしまった


だって…君ったらとても嬉しいことを言ってくれるんだもの


「僕は何でも良いよ…君が弾いてくれる曲なら何でも好きだから…」

「加地くんっ!少し大げさだよ…」

香穂さんは頬を染めながらも斜め上を見て、何が良いか思案していた

「じゃあ…これ弾くね…?」


彼女が奏でたのは“愛の挨拶”


君を初めて見た日に弾いていた曲と一緒だね



“生きるべきか死ぬべきか”



そんな気持ちも全て取り払ってくれたのは君と…


香穂さんと出会ったから


彼女の美しい音色が僕の心の穢れを綺麗にしてくれる


君の音色は僕にとっての免罪符



君の全てが好きだ…


君といられるだけで僕はとても幸せだよ…?


この美しい音色を僕のものだけにできるなんてできそうにないけど

願わくば今だけは…


僕だけための君の音色だと思って…いいよね?
















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<あとがき>
もうっ!葵おめでと〜〜〜vvどこまでも加地くんに夢中な魚月
彼のお誕生日に捧げます☆